八転び七起き

はじめましてKRZです。

2021年4月13日

長年研究者をやってきたボクはめったにスーツなども着ない。だからネクタイは数本しか持っていない。そのうちのひとつは特に気に入っていることもあってたまにスーツを着るときは結構頻繁に使うし、この頃は昔に比べればスーツを着て仕事に向かうことも多い。それで汚れてきたし、いつのまにかみぞおちあたりに大きなボタンくらいの茶色いシミもついてしまっていた。このネクタイは10年以上前に仙台で買ったもので、行きつけのタカキューの女性店長さんがボクのために選んでくれた紫色のチェックのネクタイだ。ネクタイは締めたときに表に出る太い部分と裏側の細い部分があるが、表の紫色のしたに見え隠れするほそい部分がふとい方とは対照的にはなやかなピンク色なのが特徴だ。風にゆられてちらちらと見え隠れする。先日、クリーニング屋にもっていってこのシミはとれますかと相談したところ、お店の中年女性は30分くらいかけて裏表を調べつつじっと考えたあとで「シミはとれないこともあるし、無理にとろうとして生地をいためてしまうかもしれないですけど、どうされますか」と言われた。ボクはそんな言葉に思わず真剣にいろいろなことを想定してシミュレーションもして30分も悩んでしまい、結局クリーニング屋を後にしたときは降っていて春の雨も止んでいた。シミ抜きを特別料金300円を支払ったわけだが、1週間後にネクタイを取りに行った。クリーニング屋の店員さんは別の女性だったが、「残念ながらシミは取れなかったようです」と10時間以上もの大手術を終えた外科医のような表情でボクに説明をしてくれた。シミ抜きの特別料金の300円が丸々現金で返却された。そんなこともあるよなと思いつつネクタイを大切に持ってうちに帰ってダイニングルームのテーブルの上において眺めてみた。しかし何度見てもあのシミはなくなっていてどこにもないのである。結局何があったのかはわからないがそういうことなのだろう。たぶん、シミ抜きなど必要なかったのかもしれない。シミが付いていたのはボクの目の方かもしれない。また眼医者に行った方がいいのだろう。