八転び七起き

はじめましてKRZです。

2021年4月24日

デパートの10階にとてもよくあたるという占い師さんがいることを教えてくれたのは同じデパートの10階にあるマッサージ屋のお姉さんである。彼女はいつもの足裏マッサージをしながら特段すごいことを語る様子でもなく、「あ。あのエレベーターの横の占い師さん、あたるんです」と目線をボクの足の裏からはなすこともなくぽそっと言った。それは知らない街で迷子になって道を尋ねたときに通りかかりの人が駅の方角を指さすような感じだった。だから気が付くとボクはマッサージが終わるとその占い師さんの目の前に座っていた。もうすぐ51歳になるボクは占い師に行ったこともなければ手相を見てもらったこともない。そんなボクがなぜ占いを聞きたかったのかというと足の裏に魚の目ができて痛くて困っていたからである。それは本当に魚の目玉のように大きくてのぞき込むとじろっとボクの方を見返してくる。かたいので到底指でつついても取れないし、これは占い師にしかどうにもならないもののような気がしたからである。占い師の女性は少し緊張気味のボクをみて無理に気持ちを落ち着かせようということもせずに手元の分厚い本をゆっくりと閉じながら語り始めた。何も言っていないのに彼女は「魚の目ができたんですね」というので、ボクははいと答えた。すると彼女はおもむろに今しがた閉じた本をめくり開きたいページを探すようにしてなんどかめくった。そしてようやくお目当てのページがみつかるといくぶんほっとした表情になりお経のようになにかを語り始めた。それはボクの生き方や考え方についてであり、魚の目が出来た理由にも関係しているが、取り除く方法などは一言も言わない。ただ魚の目があっても問題ないし、魚の目のことなど結局は最後のあたりには話題にもならなくなった。結論をいうとボクは魚の目に悩むことがなくなった。30分間で3000円も払った価値はあったように思う。あれから2年がたつが、今考えればあの時の占い師の言葉はボクの人生を変えたと思う。いやもう少し正確に表現すると、ボクが決めた生き方にボクがそれまで以上に自信をもったことというのがしっくりいく。魚の目は今も消えない。消す必要のない魚の目もあるということなのだろう。