八転び七起き

はじめましてKRZです。

2021年6月4日

ボクの住んでいるマンションからは富士山が3センチくらいに見える。うちは4階だが、北側のベランダからは高いビルが遮ることもなく頂上がはっきり見える。冬の天気のよい朝であればほぼ間違いなく見えるのであるが、裾野どころか五合目付近までは低い民家などで隠れていて、見えるのは頂上あたりのほんの5分の1だけである。富士山の高さは3776メートルなので700メートル分は見えているのかと思う。しかし見えるのは事実だ。だから自分の家から富士山は見えないひとのまえではこの話になるとボクは俄然我が物顔でマウントを取りにいってしまう。こういう人や行為のことをマウント富士という。やれやれ、ギャグとしてあまり面白くはない。そんなことをふと考えていたら例のほくろの綺麗な女の子が以前高層ホテルに泊まったときの話をしてくれたことを思いだした。シンガポールで有名なマリナベイサンズホテルのことである。ある日のランチタイムがおわったころに職場のカフェで突然彼女は嬉しそうにボクに語り掛けてきたわけで、「今度、日本から友達が来るので、彼女にねえねえどこに行きたい?と話してたらいろいろ盛り上がっちゃって、結局は屋上にプールがあるあの高いホテルにとまることになったんですよ~!たのしみです~!」という話題になった。ボクはそのホテルには泊まったことはなかったし、そんなプールで泳ぐことにも全く興味はなかったが、彼女がとてもうれしそうに話してくれていたので少しだけその楽しいホテル滞在の光景を想像をしてみた。初めての海外旅行にひとりで国際便に乗ってシンガポールまでやって来た友人は緊張気味に空港での入管をすませてゲートをでてきた。彼女は待ってくれていた友人を見つけると迷子の子供がお母さんをみつけたような表情になって満面の笑みを浮かべる。2人でタクシーに乗って空港からマリナベイに向かう。ホテルの受付のインド系の60歳くらいの男性が対応してくれてチェックイン手続きを済ませた。その後2人は早速エレベーターに乗って自分たちの泊まる部屋に向かう。このホテルは57階建てでプールのある屋上の高さは200メートルだ。中国系の男性ドアマンが扉を開けてくれて彼女たちの泊まる部屋に入るとベッドルームの窓の外には青い空と海が見える。廊下が薄暗かったせいか窓がいつもの何倍も眩しい。高さを確認するために見下ろすとほぼ真下にはガーデンバイザベイの名物であるスーパーツリーが小さく見える。3センチくらいに。こんな絶景をどんなふうに表現すればいいのだろう。彼女から聞いた後日談だが、実際にその後2人は屋上のプールで手がふやけてしわしわになるまで泳いで過ごしたらしい。正確に表現すると露天風呂のように浸かって過ごしたらしい。そして部屋に戻って2人で乾杯して夜を楽しんだそうだ。「スーパーツリーはきれいだった?何階の部屋だったの?」とボクが聞くと彼女は、もじもじしてなかなか教えてくれない。そんな彼女は小さな声で、「2階」といって照れていた。ギャグでもないのにこころが暖かくなった。やっぱり彼女はかわいいなあと思った。