八転び七起き

はじめましてKRZです。

2021年4月2日

祖母は2000年の秋に駆け足で逝った。あれから20年がたつので生きていれば100歳。つまり80年の人生だった。祖母をボクはたまに懐かしく思い出す。自分も生きていていろいろなことがあるが、こんなことがあったら祖母はなんて思ったのだろうとか、あんなときはどんなふうにふるまっただろうとか。逆に祖母の歴史はボクには歴史でも、祖母にとっては目の前で起こったまぎれもない現実であったわけで、原爆が落ちた日に夫を探しに2歳の娘を連れて広島のまちをあてもなくさまよったのも現実である。時間が数十年単位でさかのぼっているが、もう少し後の時代にタイムリープしてボクが少年のころのことを思い出す。いつのころからか覚えていないが恐らくは小学校低学年から中学生のころまでボクは祖母の部屋で毎晩布団をならべて一緒に寝ていた。今思い出すと一度も布団を押し入れから出した記憶もなければしまった記憶もない。眠くなって祖母の部屋にいけば布団が敷いてあり、目が覚めてふとんから抜け出して朝一ダッシュで部屋をでれば布団はいつのまにかかたずけられていた。そのことを一度もありがとうと言ったこともない。今ふと考えると毎日布団を出し入れしてくれていたのだなあと思うだけ。そんなある日のこと、広島にはめずらしく少し大きめの地震が朝方4時ごろに起きた。あの時は揺れて目が覚めたわけではなく祖母がボクが寝ているうえに突然かけ布団やら座布団など手あたり次第にものをぽんぽんと投げてきて重みで生き埋めになりかけて目が覚めた。騒ぐでもなければただ黙々と布団を投げてくる。木造2階建ての実家が崩壊しかけていたわけではないがタンスなどが倒れてきてもけがをしないようにと揺れるなかで逃げもせずに必死になっていた祖母を思い出す。祖母の記憶のなかで最も印象に残る思い出だ。人間の生きるべき姿を象徴する行動である。